TRUMP
「いつから気づいてたの?」

「え?気づいて……って……」

「僕たちのこと」

響さんは、ティーカップに口をつけ、すき間からあたしを見ていた。

瞳は鋭く、見たことのない響さんだった。

「何にも、しらないです。ただ……」

「ただ?」

「前に、話し声が聞こえて……ジャックとかクローバーとか……それ以外は、ホントに何にも、知らないんです」

「そっか」

「はい……」

なぜだかわからないけど、うつむいてしまった。

「それにしても、想像以上だったな」


はい?


突然、何の事を言っているのかが、わからなかった。

「……?」

「藍ちゃん、羽間合新流の道場のお嬢さんでしょ?」


ドキッ!!!


あたしは、思わず、立ち上がった。

「なんで知って……!苗字違うのに!!」


家は、確かに空手の道場をしている。


でも、羽間って苗字ではない。


あたしが、空手やってることは、学校の友達だって、ほとんど知らない。


小学生の時に、男の子やっつけちゃってから、男女って、あだ名付けられて傷ついて以来、人前では空手の話ししたことないし、人前で、投げ飛ばしたことさえない。


なのに、なんで???


「道場から出てくるの、よく見かけるよ」

「え!!」

「偶然だけどね」

「そ、そぅだったんです……か」

あたしは、力無く、また椅子に座り込んだ。

「引きますよね……」

ボソッとつぶやいた。

「え?」

響さんが、聞き返す。

「女の子が、男の人投げ飛ばしたら、やっぱり、引きますよね」


嫌われたな……。


小学生の時の思いだけは、二度としたくないと思ってたのに。


だから、隠してたのに。


護身術だからって、しごかれて……。


「カッコイイじゃん」

響さんの口から、思いもよらない言葉が出てきた。

「カッコイイじゃん」

同じ言葉が、響さんの口からまた聞こえた。

「カッコ、イイ?」

あたしは、響さんに聞き返した。

「うん。カッコイイよ」

3回目の、カッコイイだった。



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