TRUMP
瞳が熱くなるのを感じた。

「そんなこと、言われた事なんて、1度もない。カッコイイなんて」

響さんは立ち上がると、あたしの隣にストンと座り、あたしの頭を、ポンポンと軽くなでた。

「嘘ついて、ごめんなさい……」

響さんに、謝った。

提出した履歴書の住所を、知られなくないため、でたらめに書いていたのだ。

「いいよ、連絡先は合ってるみたいだから」

響さんを見ると、いつもの優しい瞳で、あたしを見ていた。

数秒見つめ合い、響さんの瞳が閉じると、唇が近づいてきた。

あたしも、瞳を閉じていた。

「確か、紅茶が切れてましたよねぇ」

ドアの開いた音もせず、突然智也さんが部屋に入って来た。

あたしは慌てて響さんから離れ、呼吸があらくなった。

「藍、慌てた様子で何をしているんですか?」

智也さんの言葉に、耳まで真っ赤になった。

「いえ!何も!!」

「……そぅですか。紅茶が切れているみたいなので、買い出しに行ってきますけど、藍、そこの天井に隠しカメラ付けてありますから気をつけるんですよ」

智也さんは、人差し指を天井に向けると、部屋から出て行った。

「え?」


え?


え〜!!


あたしは、頭がパニックになり、目がグルグル回った。

そして、落ち着きを取り戻した時に、響さんが、探偵会社をしている事を、告げてくれた。

ビルには社名を載せてはいないが、会社名は【TRUMP】というらしい。

従業員は、やっぱりラピスラズリの全員みたいで、探偵のお仕事をする時は、社名にちなんで、クローバーとかキングとか、コードネームで呼んでいるらしい。

「トランプって、カードってことですよね?」

って聞いたら。

「トランプの意味は、切り札っていうんだよ」

って、教えてもらった。

確かに、メンバーを見ると、見かけと違って、何かもってそうな人達が集まってるような気がした。


それにしても、ラピスラズリやりながら、探偵もって、大変そう……。


そう思って、響さんに聞いてみた。

「私も何か手伝いましょうか?」

「え?」

「探偵のほう……」

響さんが、あたしをじっと見つめた。



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