TRUMP
「あ、だって、ラピスラズリもやって、探偵もやったら、忙しいじゃないですか。だから、何か力になれたら、なんて……それに、私合気道やってるから、さっきみたいな時は、重宝するかもしれないし」

一気にまくし立てて、しゃべった。

「藍ちゃん」

「そしたら、私にもコードネームください。涼子さんのコードネームは?」

「クイーンだけど、藍ちゃん」

響さんの言葉に、返事をしなかった。

「じゃあ、私、ハートがいいなぁ。可愛いし」

「藍」

さすがに、響さんの口調が変わって、黙らざるをえなかった。

「藍をTRUMPで雇うつもりはないよ。君は、ラピスラズリのアルバイトで雇ったんだからね」

「そうですけど、私だって、多少の手伝いくらいは!それに、女子高生が、空手の有段者ですよ、それこそ切り札じゃないですか」

「藍!遊びじゃないんだ。未成年の君を危険性がある仕事にはつけられない。それに、僕らが夕方から動きやすいように、君をバイトで雇ったんだ。君まで加わられたら、ラピスラズリが営業できないだろ」

黙るしかなかった。

響さんの意見が、正論なんだと思う。

でも、ただ何か、手伝いたかったのだ。

「藍ちゃん、君の空手の実力は、先程見させてもらって、とても頼もしく感じたよ。でも、それ以上に僕は、怖かったよ」

「どうしてですか?」

「君が怪我したらと、そのことが頭から離れなかったんだ」

「そんな……怪我なんて……」

「この仕事は、ひとつの油断が、どう転ぶかわからない仕事なんだよ」

響さんは、頑なにあたしがTRUMPでお手伝いすることを、拒んだ。

私は、ラピスラズリのアルバイト店員でいるしかなかった。




「いらっしゃいませぇ!お疲れ様です」

今日もあたしは、学校帰りに、アルバイトに励んでいた。

いつもの通り、お店に入った時は、混んでいる店内だが、着替えてお店に出れば、少しずつ客は引いていき、あたしの掃除と品出しの時間となる。

そして、他の従業員は、休憩をとる人と、もうひとつのお仕事、探偵業をする人に分かれた。

あたしが、TRUMPという探偵会社を知ってから、早1ヶ月が過ぎようとしていた。



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