TRUMP
「わた、私、1人、ですか?」


「そうです。他に、質問は?」


「……いえ」



不安……。



あんなにお客さんがいっぱいの中で、1人で仕事するなんて。



「響、何か依存は?」


智也さんが、響さんに向かって話した。


「いや、ないよ。智也の目に狂いはないだろうから」


「それでは、そういう事で、よろしくお願いします」



え?



「あの、合格、なんですか?」


「?」


「あ、いや、なんていうか。いえ、いいんです。何でもないです」



アルバイトの面接って、こんなもんなの?



初めての、アルバイトだから、わかんないよ。



「じゃ、明日からよろしくね、藍ちゃん」


響さんが、握手を求めて来た。


あたしは、右手を一度、洋服できれいに拭いて、響さんの握手に応じた。




ドキン、ドキン。




優しく握ってくれた手に、力がはいらなかった。


変わりに、顔が赤くなるのがわかった。



だって、こんなイケメンと、握手なんかしたことないもん。



うわ〜。



うわ〜。



「明日から、よろしくお願いします」


あたしは、響さんに挨拶をしてから、3人でまたお店に戻った。


お店は、相変わらず込んでいた。



ホントに、この状況を、あたし1人に、任せようとしてるのぉ?



込んでる時くらいは、手助けしてくれるよね。



ね?



あたしは、響さんを見た。


響さんは、あたしに気づくと。


「大丈夫だよ。そんなに難しくないから。暇過ぎて退屈だと思うけど」



ひ、暇?



退屈?



どこが?



「響さん。【ハートのトランプ】です」


あたしが、まだアワアワしている中、茶髪の店員さんが来た。



ハートの、トランプ?



そんな、パワーストーンが、あるの?



お、覚えなくちゃ。



石の名前、覚えなくちゃ。




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