TRUMP
「ちょ〜っと待って下さいっっっ!」


あたしは慌てて、出て行こうとした海斗さんを呼び止めた。


「なんだよ」


海斗さんは、少し不機嫌気味にあたしを見た。



なんだよって。



突然1人にされても、あたし困るじゃん!!



「あの!レジの打ち方も何にもわかんないんですけど!1人にされても」


あたしは、ちょっと強気に、海斗さんに話した。


なんだか、響さん達に比べると、海斗さんは言い方がぶっきらぼうというか、性格が悪そうというか、親近感がわかないタイプだった。


「ッチ!めんどくせぇなぁ」



チッ?。



今舌打ちした?



わかんないからわかんないって、言っただけなのに?



あ、ダメだ。



あたし、こういうタイプ苦手だ。



出来るだけ、関わらないようにしよ……。



「顔はいいのにねぇ…… 」


声に出したつもりはなかったのに、出ていたらしい。


海斗さんの表情が、無表情になった。



マズイ!



「1度しか言わねぇからな」


そう言って、海斗さんはレジの打ち方を、早口でまくし立てた。


説明終わって。


「金の受け渡しの確認だけは、間違えんなよ」


と、冷たく言われた。


「はい。で、でも!この込んでる中を、私1人で見るんですか!?」


あたしは、先程の混雑振りを思い出して、海斗さんに言った。


何にもわからないバイト初日にありえない。


「どこが込んでるって?」


「なに言ってるんですか。こんなに込んで……あれ?」


「コレのどこが込んでるんだよ」


海斗さんは、言いながらフロアーを、顎で差した。

フロアーを見ると、さっきまで大反響だった店内が、今は3人くらいしかお客さんは、いなかった。




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