TRUMP
あれ?!



だって……さっきまで……込んで……。



「行くからな」


海斗さんは、不機嫌丸出しで、奥の部屋へ行ってしまった。



……ホントに1人にするの?



確かに1人で見るようになる。とは言われたけど、ホントにアルバイト初日に、ほったらかしにする?



それに、さっきまで、あんなに、お客さんがいたのに。



……まさか。



まさか、みんな、響さん目当てとか?!



だから、響さんがいなくなったから、お店にもお客さんがいなくなったとか?



海斗さんがお店から消えると、残っていたお客さんも、パワーストーンを買うことなく、静かにお店を出て行った。


あたしは、広いお店に、ポツンと1人、突っ立っていた。


この、よくわかんない展開に、頭がついてきていなかった。


「ま、まぁいいや。この時間を利用して、何か……」


あたしは、辺りを見回し、自分に何か出来ることがないかとさがした。



でも、わかんない……。



とりあえず、これからお世話になるんだから、掃除でもしようかな。



バケツと雑巾を探し出すと、店の顔ともいうべき玄関から掃除をはじめた。


店の玄関は、手動のガラス扉で、それを囲うように、白い大理石で囲まれていた。


触れると、ヒンヤリとして冷たかった。

ドアは、重く、ちよっと力を入れないと、開かなかった。


お店は全面ガラス張りで、店内の様子を、外からのお客さんにも見てもらうための趣向にも思えた。


お店の客層を、大人対象にしているのがわかる。


ちょうど、あたしくらいの身長の目線の高さに、いろいろなパワーストーンが、ディスプレイされているのだ。


中には、誕生石もある。


しかも、けっこう大きい。


金額を調べたけど、値札がないのだ。


また、不安になった。



これ、欲しいって言われたら、どうしよう……。



足元のほうは、モコモコの犬のぬいぐるみがパワーストーンを身につけて、可愛く座っていた。



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