TRUMP
両手で持ってたり、ネックレスにしてたり、中には、瞳がパワーストーンになってるのもあった。



小さい子が、喜ぶかな。



そんなことを思いながら、拭き掃除をすすめていた。


「ご苦労様」


声をかけられ振り向くと、響さん、智也さん、蘭さんが、お店に戻って来た。


「お、お疲れ様です」


「ごめんね突然で。今日の分も、ちゃんと給料出すからね」


響さんが、笑いながら話しかけてくれた。


「ありがとうございます。でも、皆さんがいなくなったら、お客さんもいなくなっちゃって、1個も売れてませんよ?」


「うん、いいよ」



いいんだ。



「あれ?なんか」


蘭さんが、独り言のように呟くと、玄関のほうへ歩いて行った。


「何かした?」


あたしに振り向いて話しかけてきた。


「え?あの、ちよっとだけ、拭き掃除を……すみません!!」



やっちゃダメだった!?



バイト初日にして、失敗?



「どうかしたのか?」


智也さんも、話しに入ってくる。


「……アガッテル。最近、掃除してなかったのか?」



なに?



何の話し?



「後で、海斗に聞いてみればいい」


あたしの不安そうな表情に気づいて、響さんが近づいて来た。


「大丈夫だよ。藍ちゃんが掃除してくれたから、玄関のパワーが上がったらしいよ」


「そ、そうなんですか?」


「うん。蘭は、石のパワーをみることができるんだ」


「石の、パワー?」


「そう。パワーストーン屋だろ?だから、そういう特殊能力を持ってる人がいると、助かるんだよ」


「あ!だから、先輩、効き目があったんだ!」


「え?」


「あ、いえ、何でも……」



すごい。



そんな人がいれば、確実に石が売れる!



「じゃ、じゃあ。あそこのディスプレイされてる、おっきい石も、ちょ〜強力なんですか?値札がついてないですけど」


あたしは、指差しながら話した。


「あぁ、あれはディスプレイ用で、パワーはないんだよ」





< 8 / 41 >

この作品をシェア

pagetop