偽りの仮面 真実の愛
「…ねえ、お姉ちゃん」
家を出るその時、ふいにマトがリネットのほうを振り返った。
そんなマトの様子を感じたリネットは、マトの視線に合わせるようにゆっくりと屈む。
「……今日、もしかしたら遅くなるかもしれない」
「…?――何かあるの?」
マトが自分から遅くなるなんて口にしたのは初めてだった。
よく暗くなってきてから帰ってきて、心配したリネットに怒られるなんてことはあったのだが。