い ち ご み る く



森山憐はあたしの手を
引っ張ったまま
一言もしゃべらない。



「・・・・・・・・・・・・・・ありがと。」

「あ゛?」

「助けてくれてありがと。」

「別に良いけどよ
助けたお礼しろよ。」




この男はほんとに
お礼お礼言ってばっかだな。
って思った。

まぁ助けてもらったんだし

「分かったよ。」
一応、了承しといた。



そう言うと
森山憐は振り返ってあたしの顔を
まじまじと見始めた。




「・・・・・・・・・・・何?」

「・・・・・・・・・・・・・・て」

「ん?何?」

「目ぇ瞑って」

「な、何で?」

「・・・・・・・・・まつげ付いてんだよ。
だから瞑れ。」

「・・・・・変なこと、しないでよ。」

「しねぇよ」



本当にしないのかよ。

あたしは静かに目を瞑った。



アイツの手があたしの頬に触れた。
あたしの頬は一気に熱をもった。



そしてアイツの手が
離れたかと思うと


唇に何かが当たった。



何これ・・・・・・?


あたしがそぉっと目を開けると
アイツの顔が目の前にあった。
< 36 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop