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もうこれ以上考えるとか出来ないって程、授業で頭を使わされた。
帰ったらあのふかふかなソファーで寝てしまおうかしら。
階段を降りて下駄箱の前に着くと、見覚えのある後ろ姿があった。
『楓…、灰希…』
「お前おっせーよ」
「本が半分も読めた」
私を見て不機嫌にそう言う灰希と、持っている文庫本を私に見せる楓。
『何でここに?』
「結衣を待ってたんだ」
『え?』
「美奈から聞いたんだよ。お前が駅前にあるアイスクリームを食いてたがってたって」
でも何で二人が待ってたのかわからなくって、頭の上にクエスチョンマークが何個か浮かんだ。
「アイス、食いてぇんだろ?」
『う、うん』
「なら、そこに行こう」
一人だけ座っていた灰希が立ち上がって私の頭に大きな手を乗せた。
「頑張ったご褒美に、お兄様達がそのアイスを食わせてやるよ」
普段いつも言わない灰希の優しい言葉に、本当かどうか疑ってしまう私。
『ほんと?』
「嘘じゃねぇもん。なっ!楓!」
「うん」
灰希に話しを振られた楓は、口元を軽く上げて頷いた。
二人を見て本当だと理解した私は、さっきまで暗かった気分が明るく変わった。