幼なじみは俺様王子。
「楓クン、アンタに付きまとわれて迷惑だって」
迷惑……?
「アンタ見たいな凡人と一緒に暮らすなんてありえないってさ」
愛チャンはバカにしたようにクスッと笑った。
……愛チャンはどうして一緒に暮らしてること知ってるの?
楓……
全部、全部嘘だったの?
瞬間、楓との思い出が一気にフラッシュバックした。
――『穂香』
あたしの名前を呼んで、楓は優しく微笑む。
あたしは泣かないようにギュッと唇を噛み締めた。
「……ねぇ、知ってる?」
下を向いていたあたしが愛チャンの言葉で顔を上げた瞬間……
「王子様にお似合いなのはお姫様だってこと!」
――バシャッ
あたしは反射的に目を瞑った。
冷たいものが顔面にかかった……と思ったけど。
「陰険なお遊びは、もう終わりにしたら?」
楓とは違う低い声が聞こえて、あたしはゆっくりと目を開けた。
そこにいたのは、
背が高くて黒髪が無造作にセットされた男の人……。
あたしに背中を向けているから顔は分からないけれど、その背中はとても頼もしかった。