幼なじみは俺様王子。




「あ、あのね……」


この際、正直に話そう。

そう思って発した一言目は爽によって遮ぎられた。


「俺、アイツのこと嫌いなんだよね」


えっ……?


爽、楓のこと嫌いなんだ……。


「転校早々、王子様気取って。マジでイラつく」


爽はクャッと自分の前髪を握って悔しそうな顔をした。


「そ、爽……」


「お前ってアイツの女?」


眉を上げて、不機嫌そうに聞いてくる爽……。


あ、アイツの女って……


そこ、素直に「はい」って頷いていいのかな?


瞬間、愛チャンの言葉があたしの頭によぎった。


“ただのお遊び”

もし、愛チャンの言っていることが本当なら、あたしはただの自意識過剰な女。


なんて答えたらいいんだろう……。


「なぁ、どうなんだよ?」


早く、と急かすような目であたしを煽る。


「わからない……」


それが、あたしの精一杯の答えただった。


すると爽は、あたしに思いきり顔を近づけた。


――ドキッ


今、あたしの目の前にあるこの意地悪な笑みも、どこか彼に似ていて……。


ふわっとシトラスの香りがあたしの鼻をかすめた。


「わからないんだろ?」


爽の質問にあたしはコクリと頷く。


「だったら……」


爽があたしの耳元に顔を寄せた……その時だった。





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