幼なじみは俺様王子。
◆綺麗な花にはご用心
――ガチャッ
「ただいま……」
玄関に、楓の靴は見当たらなかった。
楓、居ないんだ……。
……あたし、本当に矛盾してる。
自分から突き放したクセに、どうしてこんなに苦しくなるの?
重い気持ちを抱えながらあたしはリビングのドアを開けた。
テーブルに鞄を置いた時、紙切れのようなものが目に入った。
「なに、これ……」
テーブルにあったそれを見て、あたしは言葉を失った。
『穂香、しばらく距離をおこう。俺のことは心配すんなよ?』
それは、綺麗な字で書いてあるあたし宛ての手紙。
突然、どうして……
楓はどこにいったの?
もしかして、愛チャンのところ……?
楓と愛チャンが笑い合っている姿を想像して、胸が痛んだ。
楓と愛チャンはどういう関係なの……?
もう、頭の中がぐちゃぐちゃで……。
瞬間、楓の笑顔が浮かんで
やがて……消えた。
ブーブーブー
ブレザーのポケットの中で携帯が震えた。
楓だと思って急いで取り出したけど、電話をかけてきたのは楓ではなかった。
誰だろう……?
不思議に思いながらも、あたしは電話に出た。