幼なじみは俺様王子。




「“その時は、あたし何するか分からないよ?”ってな?」


だからあの時……


『あたし、あの時言ったこと本気よっ!』


って言ってたんだ。


だけど、あたしはあの時……


不意に自分の頬に手をあてた。


打たれた時の記憶が蘇ってくる。


「えっ……」


瞬間、あたしは楓の甘い香りと温もりに包まれた。


「守ってやれなくてごめんな……」


楓……


「ううん、いいの。大丈夫だから……」


……本当は大丈夫なんかじゃない。


でも、大丈夫だって自分に言い聞かせないと、あたし自身が壊れちゃう気がして……。


「……泣けよ」


楓の腕の力がグッと強くなる。


その言葉を聞いた瞬間、涙腺が緩んだ。


「…っ……本当はねっ、怖かった……の」


――悲しさと愛しさが零れた。


あたしが泣いている間、楓はずっと頭を撫でていてくれた。


その温もりと優しさに、あたしはとても安心した。




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