幼なじみは俺様王子。




そう言ったんだ。


そしたら楓クンは冷たく言い放った。


「それは無理だな」


あたしはショックだった。


こんな感情を抱いたのはあの日以来……


そう、お母さんがお父さんに殴られている時以来だった。


「俺がアイツを守るから」


そう言って、楓クンは行ってしまった。


ムカつく。

あの女、ムカつく。


そして、放課後。


女を呼び出して、脅した。



――次の日の昼休み。


楓クンに、「来てほしい」と言われて屋上に向かった。


そしたら女がいた。


女はかなり怯えている様子だ。


そりゃそうだろう。

今まで卑劣な嫌がらせをたくさんしてきたんだもの。


怯えるのも当然だ。


あたしは女の髪を引っ張った。


そりゃもう、がむしゃらに。


それで終いには……女の頬を打った。


でも、そこを見られてるなんて思いもしなかった。

……しかも、楓クンに。


「触んじゃねぇよ」


そう冷たく言い放された時、

あぁ、やっぱりって思った。


わかっていても、ショックでショックで涙が止まらなくて。


あたしはその日、人生で初めてあんなに涙を流した。





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