幼なじみは俺様王子。




「……まぁ、でも」


「へっ?」


あたしの髪の先をくるくると指で巻いて弄ぶ。


――ドキッ


キスされたわけでも抱き締められたわけでもないのに。


楓があたしに触れた、ただそれだけであたしの心臓は勢いよく加速する。


「夜、呼んだらすぐにおいで?」


首を傾げて、あたしを見つめる楓。


ビー玉みたいに大きい、ブラウンの瞳で見つめられて。


あたしは素直に頷いていた。


「……………」


ふたりの間に沈黙が続く。


変わることなくあたしを見つめる楓。


視線をずらすことなんて出来なくて。


あたしも楓を見つめていた。


楓の顔があたしに近づいてくる。


それと同時にあたしは目を閉じた。


きっと、これから起こることに大体の予想がついていたから。


でも、一向にキスは落ちてこない。


「お前さ……」


………へっ?


楓の思いがけない言葉に、急いで目を開けた。


「ついてんぞ?」


「つ、ついてる?」




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