幼なじみは俺様王子。




まるで、

チョコレートで出来た王子様みたい。


「旅行の時、お前のこと襲いに行くから」


「えっ…あ、うん」


チョコレートのことを考えていたから、いきなりの言葉に驚いた。


咄嗟に頷いたあたしを見て、楓は意地悪な笑みを浮かべた。


「ずいぶんと素直だな?」


「はっ、へ? ……な、なにが?」


あたし今、なんて言ったっけ……。


襲いに行くって言われて……


……ん? 襲いに、行く?


「あぁあああああっ!」


思わず素直に頷いちゃったんだ。


あたしってば、何してんのよぉおおおお!


バカバカ、大バカッ!


そんな素直に頷いたら、楓が本気になっちゃうじゃないっ!


「じゃ、楽しみにしてろよ?」


「は、はぁ!?」


……た、楽しみになんて出来ますか。


「あ、あのっ、それは……っ!」


ピーンポーンパーンポーン


無情にも昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴って、撤回出来なかった。


トホホ……


「じゃ、またな?」


楓はあたしの頭をポンポンと優しく叩くと、視聴覚室から出て行った。


「はぁ……」


楓に撤回出来なかったことに、ため息を吐く。


だけど、心のどこかで、期待してるあたしがいた。




< 155 / 267 >

この作品をシェア

pagetop