幼なじみは俺様王子。
呼吸すら忘れてその場に呆然と立ち尽くす。
楓……
今、なんて言ったの……?
“お前の女か”
冷たく言い放ったその言葉が頭の中で何度もリピートされる。
「お前、妬いてんだ?」
爽の言葉や表情、全てが挑発的に思えた。
あたしは、その場でふたりのやり取りを見つめることしか出来なかった。
「女取られてそんなに悲しいか?」
そんな言葉に楓は聞く耳も立てず、クールフェイスを崩さない。
「まあ。今度は俺の勝ちか?」
………今度は?
俺の勝ちってどういうこと?
「もう黙れよ」
楓は、今まで聞いたこともないような低い声でそう言った。
その表情からは、感情を読み取ることが出来なくて。
「……俺は、お前みたいな負け犬とは違うからな? ま、せいぜい頑張れよ」
……ま、負け犬?
楓も爽も、何のことを言ってるの?
「今度こそ絶対、お前には負けねぇよ」
爽はわざとらしい笑顔で楓にニッコリ微笑むと、何も言わずにあたしの頭をポンポンと優しく叩いて、バスの方へと向かっていった。