幼なじみは俺様王子。




「ほら、おいでよ」


“早く”と言わんばかりにあたしを急かす。


……ど、どうしたらいいのぉおおお!?


「……ほら、お前のこと待ってんだろ? 早く行けよ」


戸惑っているあたしの背中を楓が押した。


「えっ、うわ……っ!」


その弾みで、見事にエレベーターの外へと放り出された。


――ガタンッ


振り向いた時には、すでに扉は閉まっていて。


う、嘘……


「……穂香」


爽が掠れた声であたしを呼んだ。


その声はあまりにも悲しそうで……


すると爽は申し訳なさそうに眉を下げて、


「なんで泣いてんだよ……」


そう、あたしに呟いた。


えっ……?

あたし、泣いて、る…?


爽の言葉で、目元を拭うと確かにあたしの目は濡れていた。


どうして…あたし……


「う…っ……」


……こんなにも泣いてるんだろう。


時々、自分のことがわからなくなる。


全てはあたしの中にあるはずなのに…。





< 165 / 267 >

この作品をシェア

pagetop