幼なじみは俺様王子。
「ほら、おいでよ」
“早く”と言わんばかりにあたしを急かす。
……ど、どうしたらいいのぉおおお!?
「……ほら、お前のこと待ってんだろ? 早く行けよ」
戸惑っているあたしの背中を楓が押した。
「えっ、うわ……っ!」
その弾みで、見事にエレベーターの外へと放り出された。
――ガタンッ
振り向いた時には、すでに扉は閉まっていて。
う、嘘……
「……穂香」
爽が掠れた声であたしを呼んだ。
その声はあまりにも悲しそうで……
すると爽は申し訳なさそうに眉を下げて、
「なんで泣いてんだよ……」
そう、あたしに呟いた。
えっ……?
あたし、泣いて、る…?
爽の言葉で、目元を拭うと確かにあたしの目は濡れていた。
どうして…あたし……
「う…っ……」
……こんなにも泣いてるんだろう。
時々、自分のことがわからなくなる。
全てはあたしの中にあるはずなのに…。