幼なじみは俺様王子。




「……俺の女になれよ」


えっ……?


その言葉の意味を理解するまで、時間がかかった。


俺の、女……?


「ど、どういうこと…?」


「返事はいくらでも待つ」


漆黒の瞳があたしを捉える。


あたしはその真っ直ぐな瞳から目を逸らすことが出来なかった。


「そ、爽っ……」


今度こそはっきり伝えなきゃ。


「……じゃあな」


あたしの言葉を遮って、そう無愛想に告げると、あたしに背中を向け、エレベーターに乗り込んで行った。


――ガタンッ


エレベーターの扉が閉まった瞬間、あたしはしぼんだ風船のように力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。


爽……

どうして…?


爽の考えていること、全然わかんないよ…。


“俺の女になれよ”

爽にそう言われてもやっぱり頭に思い浮かぶのは……


――『……穂香』


ブウンの瞳を細めて笑う、彼の姿で……。


「………っ…」


悲しい原因なんてわかんない。


……だけど、きっと。


今、彼に会いに行かなければ、あたしは一生後悔する。


……そう思った。





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