幼なじみは俺様王子。




涙を拭って、立ち上がる。


きっと彼は待っていてくれる。


名前を呼んで、あたしを優しく抱き締めてくれる。


“気持ちは言葉にしないと伝わらない”

そう、誰かが言ってた。


なら、あたしは彼に自分の気持ちを伝えに行くんだ。


そう思うと、自然に体が動いてあたしは彼の部屋へと走り出していた。







「はぁ…はぁっ……」


どのくらい走っただろう。


着いたのは105室の彼の部屋の前。


この中にきっと……


ドクドクと暴れ出す心臓。


「……よし」


意を決してドアノブに手をかける。


だけど、なかなか扉を開くことが出来なくて……。


あたしにもっと度胸が、あったらいいのに……。


度胸のない自分にため息が出る。


……この扉を開くことが出来たらら、何か変わるのかな?


またあの時みたいに微笑んでくれる?


……途端に視界がぼやけて。






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