幼なじみは俺様王子。




「だけど、俺はアイツに自分の気持ちを伝えた」


爽の瞳を真っ直ぐ見つめる楓。


「だからって、もうお構い無しか」


爽は呆れ顔で楓を見ながら


「お前、最低だな」


冷たく言い放った。


「お前みてぇに、いつまでも過去にとわれるのが嫌いなだけだ」


楓が言い終えた途端、ぞろぞろと生徒のみんながホールへ集まってきた。


「……あと一つ」


楓は人差し指を立てて、ニヤリと笑うと爽の耳元に顔を近づけた。


「―――………」


だけど、囁いた声は聞こえなくて。


楓は爽に何かを言い終えると、その場から去って行った。


「……穂香」


去っていく楓の背中を見つめながら爽はあたしを呼んだ。


ふと、爽を見ると、爽は今まで見たことない真剣な表情で、


「……楓はやめとけ」


それだけ言うと、どこかへ行ってしまった。



「ふたりの“過去”に何かありそうね」


隣にいるあーちゃんが口を開いた。


過去……。


それは聞いちゃいけない気がした。


――『全部、俺らの犯した罪だ。それは消えねぇ……』


そう言った時、楓の瞳が微かに揺れたのをあたしは見逃さなかったから……。





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