幼なじみは俺様王子。




「もっ…と…」


「……ん?」


楓が意地悪な笑みを浮かべて、あたしの顔を覗き込んでくる。


あたしが言いたいことを、楓はわかってる。


だけど、わざとあたしに言わせようとしてるんだ。


なんて意地悪な王子様。


「もっと楓をちょうだい……」


「……穂香」


「楓が足りないよ……」


あたしがそう言うと、楓は困ったような表情を浮かべた。


「ごめん、穂香」


「えっ……」


あ、あたし、変なこと言っちゃったかな……


楓に引かれちゃったかな……?


どうしよう……


「んな顔すんなよ」


あたしの目尻に溜まった涙を親指で拭うと、優しい笑顔を向けた。


「そんな顔でそんなこと言われたら、歯止めきかねぇよ?」


えっ……?


「……もうどうなっても知らねぇ」


「楓……」


邪魔そうに髪を掻きあげて、あたしを見つめる。


「……優しく出来ねぇから」


その言葉を合図に、あたし達は再びベッドに沈んだ。






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