幼なじみは俺様王子。




「ど、どっちかなんて……」


そう答えるのが精一杯だった。


でも、これがあたしの本当の気持ち。


どっちかなんて選べない。


楓が好きと胸を張って言えることも出来なくて。


爽が好きと言ったら、それは嘘になる。


あたしの言葉を聞いた瞬間、あーちゃんは持っていたペットボトルを下に叩きつけた。


中に入っていた紅茶がこぼれて、土に染みてきている。


「穂香は、そうやってふたりを苦しめてるだけよ……っ!」


あーちゃんの言葉に、思わず唇を噛み締めて下を向いてしまった。


だけど、あーちゃんは止まらない。


「自分の気持ちがわからないのは仕方ない。だけど、そうやってずっとふたりを振り回すつもりなの!?」


涙が出そうになった。


あーちゃんの言ってることは最もだと思う。


ふたりの気持ちを弄ぶようなことはしちゃいけない。


それは自分でもよくわかってる。


わかってるけど……


どうしたらいいのかわからないんだ。


……自分のことなのに。




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