幼なじみは俺様王子。
◆秘密の××
あれからというもの、午後の授業も上の空で先生に何回睨まれたかわからない。
――『二兎追うものは一兎をも得ず、よ?』
あーちゃんに言われた言葉が、頭の中で何度もリピートされる。
あたしは、一体どうすればいいんだろう……
このままじゃ、いけないことくらいわかってる。
だけど、あたし自身の本当の気持ちにまだたどり着けてない。
「ほ……」
隣でした声に、ふと耳を傾ける。
きっとそれは、隣の席で寝ている楓から発されたもの。
だけど、楓を見ることが出来なかった。
見たら、目が合ってしまうかもしれないと思ったから……。
爽からあんな話を聞いた後じゃ、なんとなく気まずい。
「…ほ、…か…」
右耳に神経を集中させる。
それはやがて確信へと変わった。
――グイッ
楓があたしの手首を強く握って、自分の方に引いた。
その弾みで、あたしは楓の方に倒れ込むカタチになる。
ひゃあああああ。
こんなことしたら、周りにバレちゃうよぉ……。
心の中で甘い悲鳴をあげた。
ドクンッ……
激しく脈を打つ心臓は、楓にまで聞こえちゃうんじゃないかって思うくらいうるさくて……。