幼なじみは俺様王子。
きっと楓は、なんでもお見通しなんだ……。
あたしの考えてることも、思ってることも…全部。
「お前は俺だけ見てりゃいいんだよ」
不敵な笑みをこぼす楓だけど、その表情はどこか切なそうに見えた。
「か、えで……」
「俺の頭ん中には穂香しかいねぇよ」
その言葉に胸が疼いた。
その甘い台詞に、あたしの心は溶かされていく。
……でも、いくら甘い台詞を囁かられても。
甘いキスをしても。
あたしの心の中にあるモヤモヤは消えなかった。
――ピーンポーンパーンポーン。
よ、よかったぁ……。
無事、授業が終わったみたい。
それと同時に楓も教室を出て行った。
教科書を机に放り込むとあたしは頬杖をつき、窓の外を眺めた。
どうやらグランドでは、2ーCが体育をやっているらしい。
「きゃあああああっ!」
「頑張ってぇええ」
「爽様ぁああああ!」
女の子達の黄色い悲鳴が呼ぶ名前に、あたしの体は過剰反応する。
女の子達の視線を追うとそこにはグランドを物凄い勢いで走っている爽の姿があった。