幼なじみは俺様王子。
「……コイツ、俺の」
――ドキッ
誰よりも冷たい声の持ち主は王子様……。
叫んでるわけでも、怒鳴ってるわけでもないのによく通る声。
彼はあたしの隣まで来ると、ポンポンとあたしの頭を軽く叩いた。
実際ならグランドまで届くはずない声も、この人にかかれば……
「きゃぁああああっ!」
「王子ぃいいいい~」
「こっち向いてぇえええ!」
ほら…こんなに簡単なこと。
多分、この人の辞書に不可能という文字はないと思う。
さっきまで爽に張りついていた女の子達が教室に向かってキャーキャー言いながら手を振る。
それはきっと、あたしの隣にいるこの王子様のせい……。
「……わかったら穂香に近づくな、負け犬」
「うっせぇ!」
な、なにもこんなとこで言い合いしなくても……。
……なんて言えず、あたしはただそのやり取りを見つめていた。
爽はチッと舌打ちすると、校舎に向かって歩き出した。
その背中に女の子達もぞろぞろとついて行く。