幼なじみは俺様王子。
はぁあああああ……。
なんだか一気に静かになった気がする。
誰もいなくなったグランドにヒューと秋風が吹いた。
「穂香」
声のした方に、ゆっくりと視線を移す。
真っ直ぐあたしを見つめる楓には、さっきの冷酷さはもうなくなっていた。
「さっき見てたのってアイツ?」
「ち、違うよ……」
楓に知られるのが嫌で、思わず嘘をついてしまった。
そんな自分に嫌気がさす。
「ふーん」と不機嫌そうに腕を組みながら、あたしを見下ろす楓。
「……な、なんで?」
楓を見上げながら、恐る恐る尋ねた。
すると楓はあたしから視線をずらしてグランドを見つめると
「ま、どうでもいいけど」
……冷たく言い放った。
それは普段、楓が、楓ファンの女の子達に向ける冷たい口調で。
一気に突き落とされた気がした。
「そういう言い方ねぇんじゃねぇの?」
その言葉にあたし達は同時に振り向く。
そこには、首にタオルを巻いて、髪をかきむしりながらあたし達を見つめる爽がいた。
「なんでお前がここにいるんだよ?」
クールフェイスを崩さない楓は、挑発的な言い方で爽に詰め寄る。