幼なじみは俺様王子。




「…うっ…っ……」


――大粒の雨と共に雫が頬に落ちた。


……どれくらい泣いたのだろう。


あたしが体を離すと、爽はブッと吹き出した。


「お前、顔グチャグチャ」


「な……っ!」


爆笑している爽に頬を膨らませながらも、あたし達は顔を合わせて笑った。


「あ、あの…ありがとう」


あたしがそう言うと爽はクスッと笑ってあたしの頭を撫でた。


「俺に感謝しろよ?」


悪戯に微笑む爽に、あたしは目一杯頷いた。


満足そうに微笑む爽が、一変して険しい顔になってあたしの肩の先を睨む。


「……王子様の登場か」


爽はチッと舌打ちをすると、胸糞悪そうに髪をかきむしった。


爽の視線を辿いながら後ろを振り向くと、そこには……


「……穂香っ!」


息を切らして走ってくる楓。


楓はあたしの前まで来ると、爽がいるのなんてお構いなしにあたしを抱き締めた。


「お前が女達と北校舎に行ったって湊斗に聞いたからっ……!」


「か、楓……」


楓からはいつも甘い香りはしなかった。


楓の心臓…すごく速い。


きっと急いであたしのところに来てくれたんだ。





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