幼なじみは俺様王子。
雨のせいで濡れている楓の髪が、あたしの頬をくすぐる。
楓はすぐにあたしの体を離すと、ブラウンの瞳を緩めて切なそうに微笑んだ。
「……ごめん、穂香」
「えっ?」
楓はその場にしゃがみ込んで、自分の前髪をクシャと握った。
「守ってやれなくて、ごめん……」
そう小さく呟く楓の表情は、下を向いているからわからなかったけど、
その掠れた声は、とっても悔しそうで、どこか悲しげだった。
「……楓」
触れようとしたら、楓は避けるように立ち上がり、真っ直ぐあたしを見つめた。
揺れる瞳に見つめられて、身動きがとれなくなる。
「これからお前は……」
そう言いかけると、楓は躊躇するように口を閉じた。
これからお前は……?
楓は一体、なにを言おうとしているの?
この時のあたしには全く予想がつかなかった。
悲しみはすぐそこまで近づいていたのに……。
意を決したように、瞳を動かすと楓はゆっくりと口を開いた。