幼なじみは俺様王子。




本当にあたしは矛盾してると思う。


自分で傷つけたくせに、去ってしまったら悲しくなるんだ……。


自分から突っぱねたくせに。


楓が好きなのに、爽を利用しようとしてたくせに。


今、あたしがしてることは、人の気持ちを弄んでいると同じ。


あたし、本当に最低だ……。


今、あたしにあるものは絶望となにも見えない夜空だけ……。


なにもかも失って、空っぽになった脱け殻。


……大切なものを失うことがこんなにも悲しいことだなんて思わなかった。


涙が出そうになった瞬間、風がヒューと音をたてて、あたしのスカートが羽ばたいた。


思わず身震いする。


秋の風は少し肌寒い。


それに、制服が濡れてるから余計に寒く感じるのかもしれない。


風なんてさっきまで吹いてなかったのに……


吹き荒れる風は、まるで嵐の前ぶれのようで……。


あたしの心の中にどんよりとした雨雲が広がっていった。





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