幼なじみは俺様王子。
◆王子様と恋の魔法
「……昨日はごめんな」
漆黒の瞳があたしを捉えた。
その切なげな表情に胸がギュッと締めつけられる。
「俺、最低なことした。本当にごめん……」
揺れる瞳を見て、あたしはただ頷くことしか出来なかった。
「……行けよ。アイツんとこ」
「……えっ?」
爽はそう言うと、あたしの顔を覗き込んで、優しく微笑んだ。
「……楓に伝えろ。今度、穂香を悲しませたら許さねぇってな?」
「爽……」
「……じゃあな」
あたしの頭を優しく撫でると、爽は女の子達に紛れて、去って行った。
爽……。
爽は、あたしにとって初めての男友達だった。
あたしが困っている時は助けてくれて、泣いている時は優しく胸を貸してくれた。
爽…ごめんね……。
ありがとう。
校舎に向かって歩いて行く爽の後ろ姿を見つめながら、そんなことを思った。
あたしもこうしちゃいられない……。
楓に伝えなきゃいけないことがあるんだから……。
手をギュッと握り締めて深呼吸してから、意を決して鞄を開く。