幼なじみは俺様王子。




あたしの体をゆっくり離すと、楓は驚くくらい優しい表情で微笑んだ。


その微笑みに胸の奥がキュンと音をたてる。


「楓……このネックレス…」


あたしは首にかかったネックレスを取って、楓に見せた。


「あたしを信じてくれてありがとう……」


今なら自分の気持ちを包み隠さず全て伝えられる。


……そんな気がした。


「あたし、楓のおかげでちゃんと自分の気持ちが伝えられたの……っ」


「女の子達にだって言い返せたの…っ…」


楓があたしを信じてくれたから、あたしは強くなれたんだ。


あたしは、もう自分の気持ちさえ伝えられない弱虫じゃない。


「見てたよ」


「えっ?」


あたしが驚いて目を見開くと、楓は困ったような顔をして、頭の後ろをかきながら口を開いた。


「お前が、女達に呼び出されていた時、校舎の通路からずっと見てたんだ」


……楓、もしかして……


「今日の朝だって、ずっと見てた。桜田がいた時も爽がいた時も……」


……楓は本当に照れてる時に頭の後ろをかくんだ。


小さい頃からそうだった。


指切りした時も楓は頭をかいていた。


それは本当に照れている証拠。


あたしだけが知っている楓の癖。



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