幼なじみは俺様王子。
甘いキスのお味は、口の中で優しく溶けるチョコレート味のキスだった。
今までよりも、ずっとずっと甘いキス。
こんな甘くて幸せなキスがあるってことを、楓が教えてくれた。
愛しい痛みも、優しい温もりも初めて教えてくれた。
恋をする切なさも、苦しさも、あたしが知らないことを王子様が教えてくれたんだ。
唇が離れて、あたし達の視線が絡み合う。
王子様のブラウンの瞳に移るのは“恋するあたし”。
あたし自身も今まで見たことのない、あたしだった。
そんな自分に少し自信が持てた気がする。
「穂香」
楓が名前を呼んだ瞬間、秋の風が吹き抜けた。
“頑張れ”って応援してくれているみたいで、心強くなる。
「……愛してる」
そう囁いて、またあたしの唇に極上に甘いキスを落とす。
――王子様はあたしに永遠にとけない魔法をかけた。
それは時に苦くて、だけどとっても甘くて幸せな、
チョコレート味の恋の魔法。
*Fin*