幼なじみは俺様王子。
「うわぁ……キレイ」
電車とバスを乗り継いで約3時間。
ようやく着いた旅館『彩』は物凄く豪華だった。
立派な門構えを通ると、巨大な松の木とししおどしがあたし達を迎え、
純和風って雰囲気の漂う何ともいい旅館だった。
「見た目は、まあまあだな」
その見た目に楓クンも満足してくれたみたい。
フロントに着くと、受付で楓クンが手続きをしてくれた。
横からこっそり覗くと、そこにはキレイな字で書いてある『相沢』という文字。
楓クンって字キレイだな……。
あたしが書かなくてよかったぁ。
あたしが書いたらまた、汚い字だなとか言って笑われそうだし。
受付を終えたあたし達のもとに、赤色の椿の花が描かれた着物を着た一人の女の人が現れた。
「穂香ちゃん、久しぶりねぇ~。」
もしかして……
「……鈴さんっ!」
そう、鈴さんっていうのは楓クンのお母さん。
この旅館の女将さん。
「また一段と可愛いくなってぇ~」
手を口にあてて上品に笑う鈴さんは年を感じさせないほどキレイな人だ。