幼なじみは俺様王子。




「かき氷の屋台の近くにいるって!」


「それなら、行ってみよっか」


あたし達はかき氷の屋台へと足を速めた。


「亜沙子」


屋台の近くを見回していると、楓とは違う低い声があーちゃんを呼んだ。


不意に、あーちゃんを見ると顔がほのかに赤くなっている。


するとあーちゃんはあたしにこっそり耳打ちした。


「湊斗の甚平姿カッコいいでしょ?」


自慢、と言わんばかりにあーちゃんは瀬川クンの元へ駆け寄った。


確かに、学校で騒がれているだけあってカッコいい。


楓には負けるけど……なんちゃって。



あれ、そういえば楓は?


周りを見渡しても、楓の姿はどこにも見えない。


あたしを見て察したのか瀬川クンが言った。


「楓なら、かき氷買いに行ってるよ?」


えっ……かき氷?


かき氷の屋台の方を見ると、楓は4個のかき氷を持って戻ってきた。


「穂香」


あたしの名前を呼んで、楓はふわりと微笑んだ。


「……浴衣、可愛いよ」


――そんな甘い言葉を囁いて。





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