幼なじみは俺様王子。
◆線香花火と恋の色
楓に腕を引かれて連れてこられた場所は人気のない神社の石段。
どうやらここは裏口らしい。
こんなところで花火なんて見えるかなぁ。
不思議に思いながらも、楓を見つめた。
「ここで花火見ながら、これやろうぜ?」
そう言って取り出したのは、線香花火。
「線香花火ってなんか好きなんだよな……」
楓が線香花火……
意外過ぎて思わず吹き出してしまった。
そんなあたしを見て楓はちょっとだけ不機嫌になる。
「おかしいかよ?」
「おかしくはないけど、楓と線香花火って結びつかないっていうか……」
楓が線香花火をやっている姿なんて、どう思考を捻っても想像つかない。
「学校では見せないような俺は、意外?」
「うん」
学校の時の楓は、無口でいつもクールフェイスを崩さない王子様。
でも、あたしの前では意地悪で俺様で……
だけど、本当は優しい王子様……。
そんな楓を不思議に思っていた。
なんで学校の時とあたしの前での態度は違うのかな……って。
でもそれは、やっぱり幼なじみだからなのかな……なんて不安になることもあったりする。