幼なじみは俺様王子。
相変わらずモテモテだなぁ……。
でも、楓は女の子達に見向きもしない。
そう言えば、この間のお祭りの時も言ってくれたんだ。
『俺はお前に愛されていればそれでいい』
忘れるはずのない言葉が鮮明に蘇る。
お前に愛されてれば……か。
きっと、学校でのあたし達は“秘密の関係”になる。
堂々と喋ったり、会ったりすることは出来ないけれど。
それは仕方ないことだと思うだから。
少しは我慢しなきゃ。
寂しかった気持ちを押し殺して、あたしはふぅ、と深呼吸をした。
「……覚悟しておいてくださいね。川島穂香サン。」
――廊下で、“誰か”が呟いた声なんて届くはずもなく。