幼なじみは俺様王子。
「もしも、付き合ってるなら……」
「な、なに?」
「今すぐ楓クンと別れてくださいね?」
挑発的な言い方にイラッときたあたし。
「アナタに何の関係あるの?」
すると、愛チャンはニッコリと笑った。
でも、それが偽りの笑顔だと気づくのに、そう時間はかからなかった。
ゾクッと背筋が凍る。
妙な威圧感……
「あたしをあまり怒らせないでくださいね?」
それじゃ、とお辞儀して愛チャンは去っていった。
ひとりになったあたしは呆然とその場に立ち尽くしていた。
な、なによぉおおおお!
いくらあたしが凡人だからって、あんな言い方しなくてもいいじゃない!
でも、桜田愛ってどこかで聞いたことあるような……
気のせいかな?
……うん、このことは忘れよう。
ただの嫌がらせだし、気にしてるだけ損だよね。
楓は王子様なんだもん。
女の子に恨みをかわれるは日常茶飯事だから。
……あっ、いけないっ!
楓との約束、すっかり忘れてた!
あたしは急ぎ足で理科室と向かった。
――本当は、絶対に忘れちゃいけないことだったのに。