幼なじみは俺様王子。
――ガラガラッ
「……遅かったな?」
ポケットに手を入れて、机に寄りかかっていた楓。
なぜか、その仕草に胸がときめいた。
「ご、ごめんねっ」
あたしが両手を合わせて謝ると、楓はすでにあたしの目の前に来ていた。
「許さない」
そう言ってあたしを抱き寄せた。
瞬間、楓の甘い香りがあたしを包んだ。
また、あたしを誘惑させる。
「な、なに言ってるのよぉ……」
楓の胸板をポンポンと叩いて、必死に抵抗をしたけれど、
それは全く効かなかった。
「お前に触れられないなんて我慢できねぇよ」
ギュッと抱き締める力が強くなる。
楓……
あたしと同じことを考えてくれてたんだね。
胸の奥がキュンと音をたてるのが分かった。
「楓……」
体を離した時が合図。
「ん……っ…」
あたしは口を塞がれた。
それはとっても苦いキスで。
多分、楓が飲んでいたコーヒーだと思う。
だけど……
「離れたくねぇ……」
あたしの心の中は甘く、切ないものだった。