ココロ
「それじゃあシンちゃん、また明日」
「うん、気をつけてね」
バスに揺られること、およそ10分。
そこでまどかちゃんと別れ、私は1人になった。
私もあと10分ほどバスに乗って、それから家まではバスを降りてから暫く歩かなければならないのだ。
…もう慣れたけど。
桜ヶ丘自慢のお嬢様系ブレザーと膝丈の可愛らしいチェックのスカートをひらりと揺らせバスを降りる。
なんとも不思議なことに、制服の魔力というのは恐ろしいもので。
こんな私でも桜ヶ丘の制服を着ただけでまるで育ちの良いお嬢様に見えてしまうらしく。
「あらココロちゃん、今帰り?」
「あ、はい。」
「まあアナタ、西崎さん家の娘さん?立派になって…」
「その制服桜ヶ丘じゃないの」
「そうよお、ココロちゃんはもう桜ヶ丘のお嬢様なんだから」
オホホホ!なんて、井戸端会議中の奥様方に捕まりながらもなんとか家に帰る。
とにかくそんなわけで、桜ヶ丘ってのはそれほど有名なのだということだけ解って頂ければ嬉しい。
そんなこんなでようやく家に辿り着いた私が玄関の扉へ手をかけようとしたその時。
同時に向こう側でガタガタという物音と共にうっすら見える人影に気付き私は顔を引き攣らせた。
「(鉢合わせとか…最悪)」
―…そう、これこそが正に私がわざわざ自宅から離れたあんな別世界の女子校へと進学した理由であった。
「あ、姉ちゃんじゃん!」
「…裕也」
私が開ける前に中から開けられた玄関の扉。
そして現れた少年、西崎裕也。
私の、オトウトだ。