ココロ
「知ってんならホラ、さっさと帰んな。家は近いの?」
「あ、いえ…でもすぐそこのバス停に」
「ふうん。じゃー行くよー」
「へ?」




すると彼はそう言って、バス停の方へと歩きだした。
私はますます訳が解らずにその背中を眺めていると、彼は私が着いてきていないことに気付き足を止めた。



「…ちょっとー、何止まってるわけ?俺1人で馬鹿みたいなんですけどお」
「あ、ごめんなさい」







…何で私が謝ってんの!?

と、どれほど突っ込んでやろうかと思ったが数歩先でブウと唇を尖らせて拗ねてるその人があまりに可愛くてそんなこと言えなかった。
マジなんなのこの人!


「あ、そっか警戒してんのね、ハイハイ納得。俺の帰り道がこっちだから、アンタのバス停まで一緒に行こうかなって思っただけだよ。どーう?」
「!」






そう言ってヘラ、と笑った。
その瞬間私の心臓はドキリと高鳴る。

空気が緩い、緩過ぎる。
しかしそれに反した派手な見た目とモロヤンキーなスタイルとがまた絶妙なギャップを醸し出していた。







「ほーら行くよー」
「は、はひ…」



この時の私のライフガードはただ一枚。


『頷く』

のみであった。








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