ココロ
裕也と南くんという少年は、私が去年まで通っていたこの地元の持田中学校に通っている、今年で3年生だ。
南くんっていうのは本名を霧島 南くんと言って、私も何度か面識がある。
裕也の相棒みたいな子。
裕也と南くんは中1の頃から目立っており、瞬く間にその学年を纏め上げるリーダー的な存在になっていた。
しかし当時から喧嘩ばかりしており、その時3年だった先輩達に目を付けられたりもしていたらしいが、気付いたらそんな先輩達とも打ち解けており。
そうして今年、晴れて最上級生となった裕也はなんと持田中学のリーダーとやらになっていた。
…もちろん生徒会長とかそういうリーダーじゃなくて、不良の世界のリーダーって奴。
とにかく私は、そんな裕也の世界に関わるのが嫌で。
高校は両親に頼みこんで隣り町の全く不良なんて世界とは縁の無いお嬢様女子高校へと進学した、というわけだ。
「姉ちゃん」
「!」
玄関に入り、扉を閉めて。
なんとなくそこでボーっとしていた私は唐突に扉の向こうから呼びかけられビクリと肩を揺らす。
「南来たから行くわ。母さん帰ってくるまで1人なんだからちゃんと鍵閉めとけよな」
「…何でアンタみたいなヤンキーに説教されなきゃなんないのよ」
「へ、何?ドアで聞こえないよー」
「あーもうウルサイ!解ったわよ!」
「そ。んじゃ行ってくるわー」
「………はあ」
パタパタと出ていく裕也の足音。
南くんとの話声も微かに聞こえて…そしてすぐに聞こえなくなった。
私は少し癪ではあったが裕也に言われた通り玄関に鍵をかけて靴を脱いだ。
「(…裕也は変わらないな)」
髪の色が明るくなって、耳にはピアスが付いてて。
夜に出かける機会も多くなって、怪我をつくって帰ってくるようになって…裕也は変わった。ヤンキーになった。
…でも、裕也は変わってない。
昔と変わらない、明るくて優しい子なのだ。