ココロ

義姉

  
***
「裕也、おまたへ」
「おー」




チリンチリン、と間抜けな自転車のベルの音を鳴らしながら到着した南に俺は軽く右手を上げた。
そして背後の玄関からはカチャリと鍵の閉められた音が聞こえ、俺は安心して家を出ると断りも無く南の自転車の後ろに乗った。


「んで、今日は何だって?」
「2年のヤツが黒中と揉めてんだと。それ自体はどうってこと無えけどさーもし上が絡むとなれば厄介だろ?それで俺らに連絡が入ったんだって、イチオウね」
「へえー」





通称、黒中。
正式名称を黒鷹中という、中高一貫の男子校。


ここいらでは珍しい全寮制の学校で、かなり厳しい生活管理と教育方針が取られていることで有名だ。

だからこそ、そんな中での生活に耐えられなくなり徐々に落ち零れ非行に走り始める生徒は多数。
そんなわけで黒鷹には不良が多い。
まだ中等部の方には少ない方だが、高等部に上がるとそれはもう酷いと噂を聞く。

ちなみに学校側も落ち零れた物は容赦なく見捨てていくつもりらしく、不良組とエリート組はきっちりとクラス分けされているらしい。




つまり、整理するとだ。

今俺達の学校の2年が黒鷹の中等部の奴らと揉めている所らしい、その問題自体は大したこと無いのだがその揉めごとが万が一、高等部の幹部組の耳に入るようなことがあればそれは少しマズイ状況になるわけで。
大きな問題となる前に一応、俺達の方に連絡が入ったというわけだ。







「あーあ、面倒くさ」
「そう言いなさんなよ、お前は俺達のアタマなんだぜ?きっちり下の奴らの面倒見てやんないと」



しかし、だ
いくら不良だ、アタマだ、などと言われようとも俺達のグループは割と穏健派な奴らが多い。

喧嘩はするが無関係な生徒に怪我をさせるようなことは無いし、迷惑だってかけていない…と、思う。
ただ格好が派手なだけで学校にだって真面目に行ってる。



…どうも姉ちゃんには、その辺かなり勘違いされてるような気はするけど。






 

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