ココロ
「そういやー裕也、さっき誰かと話してた?」
「あー姉ちゃん」
特に焦る様子もなく自転車を扱ぐ南の後ろで、ちょうど姉のことを考えていた時に問いかけられたということもあり、俺はついポロリと答える。
しかし言ってしまってから後悔した。
「まじいい!?シンちゃん先輩いたのかよ、ちょ、何で俺にも喋らせてくんねーの裕也の馬鹿ああ!」
「いや、姉ちゃんが南くんには会いたくないって言うからさー」
「このシスコンめ!」
「まあな」
ガク、と肩を落とす南。
その瞬間確実に自転車を漕ぐことを忘れたであろう南のおかげでグラリと車体が揺れ、慌てた俺は後ろから南の頭にチョップした。
「さっさと漕げ」
「へーい」
…まあ、アレだ。
何でか知らないが南はかなり姉ちゃんのこと気に行ってる。
「シンちゃん先輩、桜が丘行ってんでしょ?良いなー制服姿見たかったなー」
「オマエ絶対外で姉ちゃんと接触すんなよ」
「へいへいわーってますよ」
「…ホント解ってんのかよ」
「解ってるって。俺達みたいなのとシンちゃん先輩が関わってるなんて周りに知られたら、シンちゃん先輩に迷惑かかるから。そうでしょ?」
「そー」
南の言ったことはズバリ、俺の考えていたことで。
やっぱりコイツは阿呆っぽく見えてちゃんと解ってくれているんだなって思うと安心できた。
…まあ実際のコイツはマジでただの馬鹿だけどな。