君の詩が色褪せても
「…オレ、そういう経験ないし…」
「運命の出会い?」
しゅんとした日和の表情を探るように、律壱は声をかけた。
「…うん」
コクリの頷く日和。
「つーか…オレ、まともな恋愛事態してないし…作詞家なんて呆れるよな」
「…まぁ、そんなに自分と照らし合わせて考えるなよ。オレはお前の詞、好きだし」
律壱は少し照れ臭そうに鼻の頭をかいた。
「律壱は、運命の出会いってしたことある?」
やや上目遣いの日和の言葉に、律壱は軽く動揺した。
「…それを聞くなよ」
呟く律壱。
「何か言った?」
「ぃいや、ひとりごと。…オレもそんなに大げさな出会いはないな。まだ若いし」
嘘だけど―
「そーだよな。運命ってのは映画とかドラマ用の言葉に違いないよな!」
日和の表情が急に明るくなった。
まさに曇りのち晴れ。
「違いないって…お前、決め付けかよ」
お日様ニコニコ笑顔の前で、律壱は苦笑いするしかなかった。
「だって、悩むの疲れたし」
「どんな理由だよ…」
「オレが仕事しないと、律壱も仕事出来ないもんな」
日和は立ち上がった。
そしてサングラスを手に取る。