君の詩が色褪せても
アシスタントが弥生に呼び掛けた。



「えっ…どちらさん?」






「作曲家の服部さんです」




「…律壱くん?」



弥生は慌てて玄関におもむく。


個人事務所といっても、マンションの一室。



日和の家から本当に近いその事務所に律壱は訪れていた。




「あっ……」

目が合い、頭を軽く下げる弥生。


律壱は優しく微笑んだ。

















「ごめんね。連絡なしに行ったりして」



「いえいえ」



律壱と弥生は近くのファミレスで昼食を取っていた。





「……弥生さん」



「はい?」


カルボナーラをすすった状態で顔を上げる弥生。





「…なんか、可愛くなった?」



「ゴホッ…」

律壱の発言にスパゲッティを喉につまらせる。

しばらくむせて、水を一気に飲み込む。


「なっ…何を急に…」


弥生は胸を叩いて身体を落ち着かせた。



「…ゴメン…大人の人に可愛いなんて失礼だよな」



いや、
そこじゃなくて―




「最近みんなオカシイよ」

ボソッと呟く弥生。




「でも、数日前なのに最初と印象違うんだよな」
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