君の詩が色褪せても
第7章 と・ま・ど・い
黒ぶちメガネを朝日に照らす。
ピカピカに磨かれたレンズがキラリと光を反射させた。
ゆっくりと訪れた朝。
早朝の淡い世界。
黒皮ソファーに白シャツで身をゆだねていた日和が弥生のメガネをじっと見つめていた。
「何で怒ったんだろ…」
愛里子はまだ部屋で眠っている。
机の上には律壱が持ってきたCD-R。
「あいつも何で…」
日和のひとりごとに小鳥たちだけが返事をしていた。
最近気分が晴れない…―
愛里子と出会ってから…―
だけど…
愛里子のせいじゃない―
もっと奥にある何か…―
胸がもやもやする―
「何だよ…この気持ち」
お姫様の部屋で目覚めていた愛里子。
彼女の手の上には手帳が開かれていた。
弥生さん…―
優しい人…―
お母さんみたいな人…―
ホッとする人…―
応援したい人…―
だけど…―
「こわい…」
なんで…?―
「私が…いなくなりそうで…こわい…」
愛里子は手帳をベッドに投げ捨て、プードルのぬいぐるみを抱きしめた。