君の詩が色褪せても
そして、また目を閉じる。
眠りにつく。


空はキレイな水色なのに。
















「はい。弥生美桜事務所です」


弥生の事務所に鳴り響いた電話。



「あっ…はい…」


電話に出たアシスタントの女性が仕事中の弥生の背中を叩き、そっと子機を手渡した。


「えっ…誰?」


「植杉さんです」

女性は弥生の耳元でこっそり告げた。



日和くん?―



慌て席を外す弥生。

仮眠室に入り、保留ボタンを押した。




「もっ…もしもし…」



「「あっ、オレ」」



それだけ?―
詐欺か?―



「「聞こえてる?」」



「何か用事ですか?」

冷たく言い放つ弥生。



「「…まだ怒ってんの?」」



「……」


「「メガネ、返そうと思って」」


「……」


「「今から会える?」」




仕事中なんだけど…―









「うん」



弥生はため息のような小さい返事をした。














「ちょっと出かけてきます…何かあったら携帯にお願い」


弥生はアシスタントたちにそう言い残して事務所を出た。



「先生、最近変ですよね」

ニヤつく若いアシスタント。


「忙しいのよ、映画のこともあるし」

弥生が一番頼りにしてるベテランアシスタントが落ち着いて切り返す。
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