君の詩が色褪せても
「いや、あれは恋ですよ」
若いアシスタントの発言に周りの職員が耳を向ける。
「だって、今日なんかメガネもしてないし…」
「まぁ、言われて見れば、先生最近少し明るいですよね」
「でしょ」
事務所の中が女子校雰囲気になっている頃、当の本人は海を眺めていた。
洒落た石畳の道にあるベンチにひとり座る弥生。
目の前には青く広い海。
背中には緑豊かな公園。
ポカポカお天気に弥生の目はトロンとする。
最近ほぼ睡眠時間0の日々が続いていた。
仕事は蓄まっている。
だけど、ここに来てしまう理由…。
こんな日が来るなんて思ってなかった…―
キキーッ―
自転車がブレーキをかける音。
弥生はそっと振り返った。
公園の片隅に自転車を停める日和の姿。
白いシャツが緑に映える。
キレイ…―
弥生は胸のドキドキを気にしながら再び正面を向いた。
「わりぃ…遅くなった」
背後から近付く日和の声。
「あっ…おはよ…」
あたかも今気付いたかのように振る舞う弥生。
日和はサングラスをひょいっと上にあげると弥生の隣に座った。